4/29関西チャンピオンロード開幕戦・観戦記完全版

2017年5月7日

http://npm2001.com/champion_road/2017kansai_champion_road-wcs.html

日本プロ麻雀協会オフィシャルサイトにて、高見直人として書かせて頂いた関西チャンピオンロード開幕戦の観戦記が掲載されています。

私の力不足で既定の字数に見どころをまとめ切れず(泣)、掲載されているのは決勝戦での得点移動をメインとした部分のみとなっております。なので、誠に勝手ながら補完として、決勝以外の対局も含めた「完全版」をこちらに掲載させて頂きます。

私のエゴ…もありますが、正直関西の魅力的な打ち手たちの麻雀を伝えたいとの想いがあり、かなりの長文になっております。お時間のある時にお読み頂けると幸いです。
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新人たち、そして本部長…それぞれの想い

 429日、2017年度の関西チャンピオンロードが開幕。

 初戦は「ウェスタン・チャンピオンシップシリーズ」ということで、過去の同タイトル覇者4(堀良三プロ・一北寛人プロ・麻生ゆりプロ・宮崎信一プロ)がゲスト。これに加えて前年度グランドチャンピオン・谷口浩平プロを筆頭に計16名の協会所属プロが、参加者の皆さんを迎え撃つ大会となった。

 この春デビューした新人(16)からも、大野佑輔・ニコラス・明松孝次の3名が初参戦。なかでも地球の裏側からやって来た史上初のアルゼンチン人競技麻雀プロ・ニコラスは、開始前から一般参加の方から次々と記念撮影を求められるなど、話題を振りまいていた。

 張り切るルーキーたちに対して、静かに闘志を燃やしていたのが一北寛人・関西本部長。普段は運営に比重を置いているため選手としての公式戦参戦は年に数えるほどで、その少ない機会で実力を示すべく、対局前から「今日が今年最後の公式戦かもしれない」と呟いていたのが印象的だった。

 ところで今回観戦記を担当させて頂く私・高見直人も実はチャンピオンロード初参加だったのだが…早々に観戦記者としての任務に身を入れることができて、誠に幸いと言うべき戦績であった(猛烈な負け惜しみ)

 私が2回戦終了時に、まだ対局が続いている別卓を覗いて目に入ったのが、アルゼンチンルーキー・ニコラスプロの牌姿。局の終盤で「34m5p11266s白発 8pポン」、ダントツトップ目から序盤でオリに回ったにしてはパッと見は不思議な仕掛けだったので半荘終わりを待って経緯を聞いてみたところ、「上家()と下家が2着争いをしていたので、上家にプレッシャーを与えつつ、高い手が間に合わないように速度を合わせさせて、なおかつポンされそうな役牌は絞り切って下家にだけチーできる牌をアシストしました」とのこと。まさにこれを受けて親は安手の連荘へ向けて動き出し、最終的には抑え切った発が当たりとなるバックだったということで、”ラテン系の陽気な外人さん”のイメージとは程遠い、知略と意志を携えた恐るべき新人であることを確認できたのでご報告しておく。

昨年度グランドチャンピオンvs関西屈指の仕掛けの手練(てだれ)

 上位16人による4回戦(準々決勝)、私が注目したのは昨年度グランドチャンピオン谷口浩平プロの卓。下家に座ったウェスタン・チャンピオンシップを2度制している堀良三プロは変幻自在な仕掛けの手練で、上家の捨て牌と精神と思考を絡め取るモンスター。準決勝進出にはトップが必須の谷口プロにとっては、最大の難敵と思える並びになった。他の2人も、関西では有名なアマチュア強豪である金原正雄氏に、関西C2リーグで上位発進を果たした南亮吉プロ(この日誕生日でした、おめでとうございます!)といずれ劣らぬ強者揃い。

 開局早々、2副露してアガリをもぎ取ったのは堀プロ。3,900(中ホンイツ)の放銃となった起家の谷口プロからすれば、ごく普通の手の進行が捕まってしまう牌勢自体に、嫌な感触を持ったかもしれない。

 実際その後も、場を支配したのは一貫して堀プロ。攻守両方で冴えを見せてリードを守り続けるが、決め手となったのは南3(ドラ1m)。堀プロが「45556m45678p456s」でリーチ、谷口プロが何度も不幸な裏目を引き、そして裏目を引いたからこそ完成した執念のタンピン三色フリテンリーチ(678m34567p33678s、捨て牌に2pあり)で追い掛けるも、結局終盤に9pを掴んで堀プロに8,000点放銃。堀プロは道中「45556m4678p24579s」で少考、8sの受けの良さを犠牲にして仕掛けの可能性と打点のバランスを見て打9s、見事に最高形へと仕上げ切った。

 オーラス(ドラ9p)、トップ目の堀プロ(42,800)はこのままで上位勝ち上がり、2着目の南プロ(30,200)もボーダーの8位からポイント増ならばこのままで準決勝進出は濃厚、3着目の親・金原氏(15,700)はとにかく連荘必須、そしてラス目の谷口プロ(11,300)は南プロから跳満直撃か倍満ツモというあまりに厳しい条件。結果から言えば、堀プロが2巡目に役あり両面(23m34566789p発発発)をリーチしてアガり切って決めるのだが、私が印象的だったのは、谷口プロが「12368p335678m中中中」から一発目で6pを切ったこと。堀プロの捨て牌は「6m8p」のみ、現物の8pを切る人の方が多そうだが、一発裏ドラありルールなのでトップ目がリーチしてくれて倍ツモに加えて0.01%でも倍直の可能性ができたことで、ドラのくっつきを残したという選択。もちろん実際は0.01%よりもっと低いかもしれず、現物だけを抜き打つのも見識だが、物理的に「0」ではない限り序盤に1翻アップする可能性は切らないというのは、勝ちに執着するプロとしての姿勢を教えてくれた気がする。

 そしてこの卓でもう一つ印象的だったのは、半荘終了後。途中堀プロが切った牌に対して、下家の南プロが「チー」・対面の金原氏がほんのワンテンポ遅れて「ポン」と発声した場面があったのだが、まさに微妙なタイミングで立会人判断で原則通りポン優先に。そのことに関して半荘終了後に金原氏が「ポンの件すみません」と謝られて、南プロが「いえ、僕のチーが少し早すぎました」と返すというとても爽やかなやり取りが行われており、このフェアプレー精神と対局者へのリスペクトが競技麻雀の根幹であると再確認させてくれた。

人気女流とアルゼンチンルーキーが鎬(しのぎ)を削る準決勝

 続いては8(2卓)による準決勝。予選3連続トップ、準々決勝も2着でまとめてここまでダントツ(215.7pt2位に70pt以上の差)なのが一北寛人本部長。準々決勝A卓は1357位の4人による対戦だが一北プロは実質ほぼ当確で、50pt程度の間にいる他の3(西尾直富氏・ニコラスプロ・麻生ゆりプロ)が実質1つの席を巡って争う図式となる。

 起家・麻生プロが、流局連荘を経ての1本場でいきなり12,300(メンタンピン赤)を出アガリ、勝ち抜けに一歩近付く。しかし別卓(堀良三プロ・原田翔平プロ・大野佑輔プロ・南亮吉プロ)の方からはここまで6位の大野プロの「ツモ、4,000/8,000」という声が聞こえてきており、ボーダーが上がる可能性を考えて各選手の心中にも微妙な変化があったのか、ここからやや乱打戦の様相を呈することとなる。

 東23本場(ドラ5m)、麻生プロに親満を放銃して追い詰められた西尾氏が「45667m44p345678s」と高めツモ倍の超大物リーチを打つも、不発。ここでハイテイ1枚前の牌をポンして無筋の4mを押して聴牌を取ったニコラスプロが、オカルト的には次局「流れ」を手にしそうだ…と思って後ろに移動して見ていたところ、「33356p白白 ポン北 ポン東 ツモ4p」で楽々の4,0004,400オール。とはいえこれは単なる「流れ」ではなく、序盤の捨て牌が「2m9s1p9p中」と、全く筒子のホンイツには見えない捨て牌作りも効いての満貫成就。相変わらず繊細なアルゼンチン人である。

 ここからは、1つの席を巡ってほぼ麻生プロとニコラスプロのマッチレースに。東25本場(ドラ6p)、北家・麻生プロが2,0003,500でニコラスプロを200点交わしてトップ目に立つと、東3局はニコラスプロが1,000/2,000ツモで再度トップ目に。

 離れたラス目に置かれてしまった西尾氏だが、東4局を300/500で冷静に流すと、南1(ドラ5m)で勝負に出る。4巡目「35m55p23899s中中中中」に赤5pツモで中カン、嶺上から5pツモでこれもカン、更に嶺上から4sツモで「リーチ」。この時点でテンパネでダマ満貫あるのにドラ表示牌待ちでリーチしたのがどう出るのか…と思って見ていたが、結果的にはリーチ後に7m1mが通って、まさに「中カン(役あり)でドラ表示牌待ちのカンチャンでリーチする可能性は低い」と考えたニコラスプロが4mを打っての8,000点。勝負勘と執念でもぎ取った、珠玉のアガリとなった。

 これで麻生プロに対して2,200点のビハインドとなったニコラスプロだが、親で南ポン・ペン3pチーの仕掛けで、3p単騎という聴牌形。筒子の下がいいと見ての戦略がハマっての1,000オール、これで三たびトップ目を捲り返す。南21本場(ドラ3s)は麻生プロが白ポン→加カンと攻めるが、「111567m5789p 加カン白」から、9pをツモ切り。場に9p1枚飛んでいたがそれでももちろん5p単騎より見た目枚数は多いのだから、69p待ちを捨てて単騎で粘ったのは下家の親・ニコラスプロを警戒しての打牌選択だろう。実際ニコラスプロは「67p445s東東 チー456m ポン発」という牌姿で、この選択で聴牌を入れさせるのを阻止しているうちに、一北プロが1,000/2,000ツモ。このニコラスプロ親被りでまた800点差に肉薄することとなった麻生プロにとっては、してやったりの結果となった。

 南3(ドラ3m)は、麻生プロが前局の我慢が効いて(オカルト)、一気に攻める。「335m788p12334999s」からノータイムで赤5m切り、すぐに8pツモで打7pリーチ。ほどなく2sツモで2,000/4,000、この半荘4度目のトップ目奪取。

 迎えたオーラス、麻生プロ(43,000)はこのままトップならば恐らく勝ち上がり、ニコラスプロ(33,800)はトップ逆転ならばまず当確、ラス親の一北プロ(20,400)はダブル役満でも打たない限り大丈夫だが、決勝もポイント持ち越しなので加点できるに越したことはない、という状況。満貫ツモか麻生プロからの5,200直撃が必要なニコラスプロが「12355578s西西456m」で一発か裏1条件のリーチを打つと、「11223399p34999s」のダマテンを先に入れていた麻生プロも無筋を押す。お互いがお互いの当たり牌を固め合っている息詰まる攻防は、聴牌を入れた一北プロが決断を天に任せる両者に無筋の打2sで決着、麻生プロに軍配が上がった(ちなみにニコラスプロの牌姿に裏ドラは乗っており、ツモれば条件は満たしていた)

四者四様の決勝卓

 さて、いよいよ決勝。決勝卓進出は協会プロ4人となったが、その顔触れは本部長・実力派・人気女流・新人とバラエティに富む組み合わせに。

 ここまでの累計ポイントは原田翔平プロ198.1pt、一北寛人プロ194.8pt、麻生ゆりプロ153.4pt、大野佑輔プロ126.2pt。原田プロが、3回戦終了時には140pt以上あった一北プロとの差を、4回戦(準々決勝)44,500点・準決勝で51,400点と連続大トップで逆転して1位通過で迎えたが、順位点で20ptずつ差がつくルールなので、上位2人は完全な着順勝負。麻生プロもトップを取れば2位とは順位点+トップ賞だけで40pt差なので逆転は現実的だが、大野プロは約70pt差がある相手が2人いるので、優勝のためには自身がトップ・麻生プロが2着という並びが必須に近い条件になる。チャンピオンロードは2位以下にも年間を通じて競うGC(グランドチャンピオン)ポイントが設定されているので優勝以外の序列にも意味があるが、この大会での優勝を目指すためには下位2人の”共闘”も見どころになりそうだ。共闘のためには席決め・親決めにも大きな意味があるが、並びは起家から原田・麻生・大野・一北の順となった。

 東1局、麻生プロのリーチに大野プロは真っ直ぐ行き、無筋の2sで「22223467899m34s」に打って2,600(リーチ裏1)放銃。これはトータル上位2人より麻生プロに上にいて欲しい大野プロにとっても悪くない展開。

 東2(ドラ2s)6巡目、北家の原田プロは「23689s西西北白白白中中」から西ポン、既にターツは足りているので染め手の匂いを少しでも消す9s切り。その後、中が場に放たれるがそこまで目一杯には取らずスルー。ここで西家の一北プロが、「9s8s8p2p2s5m」という捨て牌で8巡目リーチ。この時点で麻生プロは「888m23789p34s北北北」の一向聴、一北プロリーチの一発目で2pを引き3p切りで聴牌が取れるが、これは切りきれずツモ切り。一方原田プロも6p7pと掴んで中を落として回ることになり、終盤は一北プロの一人旅、対応に追われた他家を尻目に悠然とカンチャンツモ、「12357789m11456p ツモ6m」で1,000/2,000

 東3(ドラ中)は、原田プロが9巡目に「9m1s3p5m2m1m7m」と切ってリーチ。麻生プロは「678m667p336699s中」で一応面子手の一向聴に取れる8pをツモるが、当然現物7mを抜き、万が一のチートイドラドラで復活する以外は勝負しないという構え。しかしその後手詰まりとなり、序盤の5mの筋を追って8m2,600(リーチドラ1)の放銃となってしまう。

 東4局は親の一北プロのリーチに他家が対応し、流局連荘かと思いきや水面下で手を仕上げていた原田プロが2,000/4,000ツモ、トップ目を奪取して南場を迎えた。

 南入時の得点は、起家から原田プロ(34,600)・麻生プロ(19,000)・大野プロ(18,400)・一北プロ(28,000)

 南1(ドラ3s)、親の原田プロが7巡目「赤5m344566p2467s中中」に絶好のドラ3sツモ。中が場に1枚飛びなので打6p?或いはもっと大きく打中?といろいろな選択肢がありそうだが、原田プロの決断はシンプルに広い一向聴の打赤5m8巡目6mツモ切り、更に9巡目3pツモで「3344566p23467s中中」の形から打6p。次巡5pツモで打6pリーチ、ほどなく麻生プロから勝負牌の8s12,000(リーチイーペーコードラ裏)の出アガリとなった。ちなみに7巡目で他の選択をしていると「赤56m334455p23467s」で聴牌っていないし、9巡目で中を切っていれば「33445566p23467s」で跳満になってはいるが、中ポンでの聴牌も逃さない構えだからこそ7巡目で正解を引けているので、原田プロのこの選択には一貫性がある。ブレないスタイルで、シンプルに強い打ち手であるのを印象付けるのに十分な手順だった。

 南11本場(ドラ4m)46,600点と大きく抜け出して連荘の原田プロ、5巡目「34678m458p12667s」に4sツモで一気に手牌が引き締まる。更に加点か、と思ったところで麻生プロが3pアンカン(カンドラ1s)で急に原田プロの手牌が色褪せる。そこで一北プロが「6m6s3m5m4p2m」という変則手風の捨て牌でリーチ。自身の面子手は分断されて、ライバルからは変則手っぽいリーチ、いかにも「まずい」状況になった原田プロは当然リーチ宣言牌の2mをチー。もはやアガリに向かうというよりも流れを断ち切るような(そして目に見える「一発」を消すための)動きだったと思うが、それをものともせず一北プロが最初のツモ牌を手元に引き寄せる。「99m6677p7799s南西西 ツモ南」のチートイ南単騎、後ろで見ていた観戦者によると判断難しい手牌でチートイに決め打ったのが見事だったとのことで、捨て牌と手牌を合わせると1巡目の打6m3巡目の打6sのセンスが際立っていたのだろう。「流れ」的には本人も相当感触があったのか、裏ドラ乗らずで「1,600/3,200」は「1,700/3,300」のままだったのがやや不満な様子にも見えたぐらいだった。

 南2(ドラ8s)、トップ条件の麻生プロが5,300点のラス目で迎えた最後の親。大野プロは麻生プロの浮上が必要だし、原田プロ・一北プロも仮に麻生プロには捲られてもお互いより上にいればチャンスがある状況なので、麻生プロに手さえ入ればこの親は長引く可能性がある。実際麻生プロから6巡目に「中発6m3p4s」という捨て牌でリーチが入ると、全員が丹念にオリるという展開。麻生プロからすれば流局上等ではあるのだが、開かれた手牌はドラ8sアタマの14p待ちで、この打点&受けならば、これはどうしてもアガりたかったところ。序盤に1p3枚飛んでいたのが「流れのなさ」だろうか。

 南21本場(ドラ6p)、とにもかくにも連荘を果たした麻生プロが2巡目から発ポン・9sポンと仕掛ける。しかも索子のホンイツに見える捨て牌で6巡目には6sを余らせ、7巡目にはドラ6p切りとかなり整っていそう。こうなると早いリーチと同じ効果で他は行きづらく、特にトップ目で上家の原田プロは序盤から158sを抱えてほぼオリに近い進行。ビハインドのある一北プロは「455569m45p116s南発」と遠くに456三色も見えるだけに、トップ目の原田プロを捲れる手が育てば行く価値もあるが、南を切り切れないうちにギブアップへとシフト。そして麻生プロに親のうちにある程度点棒を持ってもらいたい大野プロは、序盤はアシストもOKで索子や字牌も打っていたが、中盤は筒子の上をごっそり落として完全にオリ…かと思ったら、なんと13巡目にリーチ。大野プロの捨て牌は「白中1m7s3s8m9m8p6p9p9p」、更に次巡4sをツモ切り。原田プロは新人・大野プロの戦略(ここで麻生プロの親を本気で落とすのかどうか)を読み切れない部分もあったのか打牌に窮して4sを合わせ打ち、これを麻生プロがチーして聴牌を入れることに成功(ちなみに大野プロの手牌は「12356p12344678s)。ほどなく麻生プロが東を引きアガり、「東東南南 ツモ東 チー423s ポン9s ポン発」の4,0004,100オール。一瞬崩れたかに見えた”共闘”が、結果的には理想的な形で結実した。

 麻生プロ(21,600)・大野プロ(10,600)・一北プロ(29,600)・原田プロ(38,200)で迎えた南22本場(ドラ6m)。麻生プロが中ポンの仕掛けを入れたところで、大野プロがリーチ。当然親の麻生プロだけは真っすぐ・他はオリるという展開になり、原田プロが大野プロの現物4pを切ったことにより麻生プロにチーテンが入るという、前局と同じ形に。しかし違ったのは、今度は大野プロのアガリ(リーチツモ白ドラの2,200/4,200)になったこと。しかも最終的には麻生プロ「3345667s チー456p ポン中」・大野プロ「678m22789p67s白白白」と58sオナテンだっただけに、結果的には有効牌を食い流したことになり、複雑なアヤを感じさせる1局となった。

 南3(ドラ4s)、麻生プロとの”共闘”は終止符を打ったので、1人で大連荘をする必要がある大野プロの親。麻生プロが7巡目「34567m1235678p4s」に8pツモで長考、河には2mがあるのでドラ4sを切って聴牌を取っても上位から直撃は効かない…ということで打3m。ドラを使い切って、或いは三色や一通を作っての跳満・倍満ツモならば一気に条件は現実的になるので妥当な選択である。実際すぐに5sを引いて「456m12356788p45s」、ツモって裏1枚で跳満のリーチを打つことに成功する。大野プロはリーチを受けた時点で「56789m2388p3367s」の二向聴だったが当然オリられず、2sツモで打9m5sツモで打8mとなんとか一向聴に。しかし「567m2388p233567s」に3pを引き、麻生プロの当たり牌である3sを打ってしまう。前局”共闘”を潰された麻生プロは、ここでとりあえず満貫をアガってオーラスの一発に賭け…ない!表情一つ変えずに平然と見逃したのは、勝負師としての矜持だろうか、或いは後輩へのメッセージだろうか。これをアガればトップの原田プロとの差が10,600点差と跳満以内になるので、アガる方がデジタルなのでは…と思ったが、しかし実は対局前に44.7pt差があったので、原田プロ2着ならば単にトップに立つだけではダメで、更に4,700点差が必要…となると、これをアガるとオーラスは跳満ツモでも300点足りず、倍満条件になってしまう。対してここで跳満ツモを決めればオーラスは満貫ツモでOKになるので難易度は桁違いで、期待値的にも恐らくこれは見逃しが正解なのだ。流石は場数が違う、可愛いだけじゃないぞ麻生プロ。しかしこれはツモれず、結局大野プロとの2人聴牌で流局。

 迎えた南31本場、オカルト的には「見逃されたやつはツキが来る」が果たして、と大野プロの配牌を見ると「赤59m49p15567s東西北中」と全く来ていない。しかし2巡目に中を重ねた直後に中が出てポン、その後もツモが効いて「55m4589p5567s ポン中」と5巡目には一向聴に。8sツモで打9pとしたところで、一北プロから「西1p9p7s4p」と切ってリーチ。ここも引けない大野プロ、2mツモで打8p3sツモで打2m3sツモ切り…と無筋を3連打も聴牌にも至らず、ジリジリする展開。逆にこれで親にも警戒が必要になった原田プロが1sを切ると、これが一北プロの「233445789m2399s」に刺さってしまう。2,0002,300点、この直撃で上位2人の差はグッと詰まってオーラスを迎える。

 オーラス(ドラ4p)、親は一北プロ(29,200)、以下原田プロ(32,200)・麻生プロ(17,900)・大野プロ(20,700)。一北プロ・原田プロはトップならば優勝、麻生プロは倍満ツモか原田プロからの倍満直撃、そして大野プロはダブル役満ツモか原田プロからの役満直撃という条件。

 アガリ止めはないのでやはり原田プロがまだかなり有利な並びのはずが、親の一北プロがここでいきなり好配牌、2巡目には「456m678p799s東東中中」からすぐに東がポンできて聴牌。原田プロはアガリトップなので配牌から持っている中を重なり期待で温存するが、手が進んだ6巡目に打ってデバサイになってしまう。一北プロも当然嬉しいが、実はこれで麻生プロもどこからでも倍満で優勝という条件に変わり、少しだけ嬉しい状況に。

 オーラス1本場(ドラ2p)、一北プロは「2333456889p567s」と一通含みの形から9巡目に8pをポンして聴牌。確かに1pは出アガリできないが、例えば役が限定される1pチーなどよりはずっと融通性もあってアガりやすい合理的な仕掛けである。ここで麻生プロが、萬子のホンイツ一向聴となったところで倍満の可能性を追って2pを切り、一北プロの5,800に刺さる。このドラ切りは本人も多少悩んだようだが、ここまで優勝だけを見据えた戦略を貫いて来たのだから、十分一貫性のある打牌である。

 オーラス2本場(ドラ7m)、原田プロに対して8,700点のリードができた一北プロは配牌「2589m1234p127s東南発」から第一打で5mにチョイス。チャンタや123三色を見ながら、しかしほぼ配牌オリという進行だろう。一発・裏・赤のあるルールでは勇気のいることだが、この牌姿ならばアガリに向かってダブ南を鳴かれるリスクの方が大きい、という判断もありそうだ。一方ツモならば1,600/3,200以上が必要な原田プロは配牌「67788m39p2459s西中」と、ドラ2枚が好形に組み込まれて、材料的にはいきなりクリア、しかしその後手は進まず12巡目の時点で「1267788m2344p45s」の二向聴のまま。原田プロの捨て牌は11巡目までずっとヤオチュウ牌で、これを見て手が遅いと判断した一北プロは、序盤は中張牌をバラ切り・中盤にヤオチュウ牌を合わせて行くという繊細な対応をしつつのベタオリで、最後は運を天に任せる形に。原田プロは13巡目に9mツモでようやく一向聴、そして15巡目で待望の6sツモで聴牌、1m切りで「677889m2344p45s」の14p待ちリーチ。

 しかし願いを込めた原田プロの残り2回のツモは2m・発と空を切る。14p待ちは1枚も場に見えていなかったが、麻生プロは筒子の染め手、大野プロは国士無双の気配なので、一見山には薄そう。但し一北プロは完全オリだし、他の2人も実はもうオリているのかもしれず、全く正確には読めない…ということで、一向聴の段階から筒子待ちを嫌うことも考えたが、結局見た目の枚数に頼るしかなかったとのこと。最後は、少し力を込めて手牌を伏せた一北プロの優勝となった。

 2017年関西チャンピオンロード開幕戦は、一北寛人・関西本部長が数少ない公式戦参加でその実力を見せ付ける結果となったが、それ以上に各プロが存分にその持ち味を発揮して素晴らしい対局となり、また一般参加者の皆さんとフェアで楽しい大会が行えたことこそが、本部長としては最大の功績であり喜びだろう。

 強い本部長、本当におめでとうございます!!

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 長文お読みいただきありがとうございます。普段運営に回る本部長が優勝したことにより、関西チャンピオンロードは2戦目以降から参加してもポイントリーダーに追い付きやすいという状況になりましたので、是非皆様振るってご参加ください。

 なお、本文中の随所に「流れ」などオカルトめいた一昔前に流行した表現が散見されますが、大会の開催が「昭和の日」だったということでご勘弁頂くよう、何卒宜しくお願い致します。